「福島の花」 野口勝宏 写真展 記念イベント 野口勝宏トークショー(1)

2015年3月29日(日)猪苗代町図書歴史情報館(和みいな)で、(社)猪苗代青年会議所の主催による、写真家 野口勝宏氏のトークショーが開催された。野口氏は猪苗代町翁島出身。商業カメラマンとして広く活躍してる。

 

2011年3月11日の震災後は、福島県の花を題材にした写真をフェイスブックに日々更新。花だけを切り取り、背景がない写真は、花そのものの美しさが全面にでる。氏が日々アップする写真には多くのファンがつき、「福島の花」は県内外はもとより、海外からもメッセージが寄せられている。今回のトークショーでは、野口氏が猪苗代町で育った子ども時代の思い出から、「福島の花」を撮影するきっかけとなった出来事、花に対する氏の思いを語り、後半は来場者に美しい写真の撮り方を撮影、指導した。

トークショーの進行役は、橋森あかり氏。成田国際空港での野口氏の写真展で、花の解説を英語に翻訳したのがきっかけで「福島の花」プロジェクトの事務局として参加。福島県内外での写真展示企画・運営を担当している。

定員80名の会場は、ほぼ満席。まず、野口氏が猪苗代町ですごした幼少時代の写真が、いくつか紹介された。印象的だったのは幼少期の1枚。それは耕耘機を買った記念に撮ったというもの。農家で育ったとはいうものの、当時の農家にとっての農機具の大切さを感じた1枚である。また高校1年生で、すでに家族の写真を撮って現像もしていたという写真も披露。根っからの写真好きの少年の面影を感じる。

話は佳境に進む。「福島の花」が誕生したいわれや震災後の避難所での撮影のことである。2011年3月11日に起きた震災の避難所として、野口氏の住む郡山市にあるビックパレットふくしまに、浜通りから多くの住民が避難した。当時、避難所を統括していた人の依頼で、避難所の人たちの様子を撮ることになった。被害の程度はあるにせよ、震災により郡山市の住民も、一時期仕事ができない状況に置かれていたのである。

写真家として、何かの役に立ちたいと思い、避難所に出向いたものの、人々の表情は硬かった。カメラを向けても抵抗される日々。それは、今まで写真家として、レンズを向けた人たちから喜ばれることとは真逆の反応だった。つらかった。厳しかった。打ちのめされた。

 

撮影に入って1週間が過ぎた頃だったろうか。避難所の人たちに、少しでも笑顔になってもらいたいと届けた花を見た人たちの表情がなごむのを野口氏は見た。花をはじめとする自然の美しさと共に育った氏が、花の持つチカラを改めて感じた瞬間だった。