第6回 福島復興公民館大学inいわき 開催
2018年7月7日、8日の2日間にわたり、いわき市久之浜町で「第6回 福島復興公民館大学」が開催された。
公民館は戦後の荒廃し混乱した社会状況の中で、新しい日本を築き上げるには教育の力が必要であり、その一つの核として公民館の設置が提唱され、郷土再建の拠点としようとするところから始まった。当時の文部省の役人である寺中作雄が提唱したことから「寺中構想」と言われている。東日本大震災と原発災害により、戦後の混乱期のような状況になった福島県において、公民館の役割をもう一度見直そうという観点から立ち上がったのが福島復興公民館大学である。
そのキックオフとなる第1回目は2015年広野町で開かれた。その思いを引き継ぎ、会津坂下町、須賀川市、白河市、福島市、そして今回は地震と津波、原発災害に加えて、2011年3月11日の夕刻から火災にも遭ったいわき市久之浜町での開催となった。
輪読後最初の事例発表は、いわき市教員委員会生涯学習課長 緑川直行さんによる「東日本大震災と公民館」である。
いわき市内にある36の公民館のうち、22館が避難所になったこと。避難所にならなかった公民館の中には、公民館自体が被災したために機能をはたせなかったこと。また福島第1原子力発電所の周辺地域から避難された方々も避難された公民館もあり、避難所の開設日数が30日以内から150日以上と幅がある現状に驚いた。
次の事例発表は、いわき市立泉北小学校教諭、佐藤登さんによる、小学生対象の防災プログラムの紹介と伝統文化、いわき市の地域理解のプレゼンテーションだった。
指導要領という学校教育の仕切りの中で、いかに「いわき愛」を育て、かつ震災を教訓とした防災教育に力を注がれている姿を学んだ。
そしてこの日最後の事例発表は助産師、草野裕香利さんによる「頼ってばかりはいられない 私たちの活動のはじまり」だった。
看護学科の実習で生命の誕生と出会い、助産師を職業として選択した草野さんが、いわき市の助産所の激減の様子と震災に遭ったことで変化したママたち主体のコミュニティ形成について言及。「生む性」である女性と子どもたちの今後については、地域課題を超えた課題定義につながった。
初日はこのあと「いわき海浜自然の家」に移動。ロッジに宿泊し情報交換を行った。翌日は市内公民館で行われている防災教室と、いわき市にある福島工業高等専門学校の取り組みを、加藤明子准教授から講義していただいた。
7回目以降の開催地は未定だが、広野町から始まった福島復興公民館大学が、現在の公民館が抱える課題をどう解決するのか。それと共に、社会教育の場を公民館だけに求めるのか。あるいは広く市民活動に結びつけていくのか。今後の動向に注目していきたいと思う。